株式会社 大久保硝子店/代表取締役社長 大久保徳朗さん

1919年創業の株式会社大久保硝子店。日本がまだ大正という時代であった頃のその商いの原点は、ランプ用ホヤガラスや輸入ランプの販売であったそうです。それからすでに100年以上ものときが過ぎ、長いその歳月のなかで世のなかは激しく変化し、大久保硝子を取り巻くビジネス環境もまた激しく変化したことでしょうが、面白いのは今まさにこの瞬間にも同社自身が変化をし続けている、ということ。
一方では長い歴史を積み重ねた老舗企業としての重みを持ちながら、また一方では常に新しいチャレンジを仕掛けていく軽やかな姿勢を忘れていない…。歴史と挑戦が混在しているユニークな会社、という印象が漂います。そういった新しいチャレンジ推進の一翼を担うのは若い社員たちのちからである、というお話を、同社のリーダーである代表取締役・大久保徳朗さんに伺うことができました。

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大久保徳朗さん。山形市千石にある営業所のミーティングルームにて。


Q:御社はどんなことをやってる会社なのか、教えてください。

大久保社長:「株式会社 大久保硝子店」という社名の通り、ガラスを販売する会社です。もちろんガラスと言っても、コップや装飾品など色々あるわけですが、現在は主に窓ガラスを販売している会社ということになります。皆様のご自宅のような住宅の窓だったり、駅などパブリックな場所の窓だったり。建築業のなかで窓ガラスを扱う専門業者、というのが一番伝わりやすいかもしれません。

2019年に弊社は創業100 年を迎えました。それまでガラスや建材の卸売りであるとかメーカーの代理販売であるとか小売など様々なことをやってきたのですが、100年というそのタイミングで「そもそもなぜガラスは暮らしのなかにあるんだろう」「ガラスの価値ってどんなものだろう」という本質的なことを考えながら、自社のブランディングに取り組むようになりました。

そんなふうに思い返してみると、実は「ガラス窓からやってくる不幸せ」って、結構あるんです。例えば窓がない部屋というのは独房のようであまり人間的なものとは言えませんし、暑いとか寒いとか結露するといった不安定な要素があったりもします。私たちが提案しているそういった「窓」というものは、それだけ密接に「暮らし」に関わるものであり、しっかりとプロに相談すべきものである、ということに改めて考えが至ったとき、わたしたちは「ガラス屋さん」から「暮らし屋さん」へシフトしようと思いました。それで現在では、「心にゆとりある暮らし」をサポートする会社として、リビングの窓を開けたらまず見える「庭」や、ガラスを使った「ものづくり」にも積極的にサービスを展開し、事業領域を日々広げているのです。


Q:事業の定義を変え、領域を広げている、と。そんな御社では、どういった人材を求めているのでしょう。

大久保社長:弊社には「新卒採用イコール新規事業」という考え方があります。例えば「growth garden(グロースガーデン)」という庭づくり事業部がありますが、これは5年前に入社した社員と一緒に立ち上げ取り組んできた新規事業部です。また3年前にはやはり当時の新入社員と共に「HAND SHAKES」というブランドのものづくり事業部を立ち上げ、商品開発を進めています。

ものづくり事業部では、地域の伝統工芸とコラボして新しい価値づくりを図っている。写真は、新庄東山焼といっしょにつくりあげた円型式水箱「TANK」という商品だ。


若いみんなが想い描く理想の暮らしってなんだろう?という発想をもとに、新しいことにチャレンジするのはとても大事なこと。逆に、仕事をする上で一番良くないのは、考えが凝り固まってしまうことです。これからの時代に合わせて、山形の暮らしをもっと良いものにしていきたい。それこそが、わたしたちの役割だと考えているんです。

ここ10 年ほどをかけて社員と一緒に学びあうなかで、若い社員がしっかりと育ってきました。なので、これから新しい人材を迎えるというときには、社員のみんなが「一緒に働きたい」と思う人を選びたい、と考えています。例えば、業務部にはリーダー気質がある人がいないからそういう人にきてもらいたいね、とか。そういう視点から人材を求めるということになるかもしれません。

Q:若い人にとって、御社で働く魅力とは、どんなものだと思いますか。

大久保社長:経営者との距離が近いこと、ではないでしょうか。弊社の良さはよくも悪くもフランクにみんなが喋っていること。また、若手の意見すらもどんどん拾い上げていくところ。新卒1年目の社員の声が経営方針の中に組み込まれたこともありますからね。みんなで一体となって前に進むことができるという価値観は、他の会社さんよりはだいぶ強いんじゃないかなと思っています。一緒にやろうよ、という姿勢を弊社では「With的な働き方」と呼び、積極的に進めています。

また、仕事環境の整備も、社員の意見を取り入れながら常に改善しています。弊社は女性社員の割合が男性社員よりも高いという、建設業界ではかなり珍しい会社なので、「いやそれが建設業のルールでね」みたいなことがあまり通用しない。業界の常識だった作業服も「なんで夏なのに長袖なんですか?」みたいな疑問から始まって、半袖ポロシャツが夏のウェアに変わりましたし、社員の声によってお昼を食べたりミーティングをする休憩室を新たにつくったりもしました。


Q:これからのビジョンを聞かせてください。

大久保社長:「ガラス屋さん」から「暮らし屋さん」へとシフトチェンジし、窓から生まれる不幸せを限りなく減らしていくこと。まずはそれが大切です。さらにはそれによって山形の暮らしをより良いものにしていきたいですね。「山形で暮らして良かった」と思ってくれる人をひとりまたひとりと増やすことができれば、山形の人口の流出を食い止めることに繋がるのではないでしょうか。さらに言えば、もっと楽しい暮らし、もっと幸せを感じられる暮らしというものを提供することによって、こんどは人が集まってくるような山形になっていくだろう、と考えてます。

Q:最後に、学生の皆さんへのメッセージをお願いします。

大久保社長:学生のみなさんと話していると、人生について前向きなマインドを持ってると感じます。一方で、その前向きさを生かすやり方を知らないんだな、とも思います。というのも、人に対して自分をPRすることが苦手で、自分を表に出すということをしない。だから、喋って15分も経たないと本質がわからないんですね。
もっともっと、積極的にいろんな人と喋ったり知識を増やせる場所に行ったりということが、すごく大事なんじゃないかなと思います。就職活動して社会に出ていくときに、自分をPRすることはどうしても必要なことなのですから、やっぱりそこは引っ込み思案にならずにしっかりと学んで、もっともっと前に出してもらいたいな、と思います。

Company Data 名称 株式会社 大久保硝子店
代表者 大久保 徳朗
所在地 本社 990-0039 山形市香澄町2-2-1 /Tel. 023-642-6470
山形営業所 990-2227 山形県山形市千石68 /Tel. 023-642-1822/Fax. 023-642-8470
  業種 建築資材の卸売・小売
  事業内容 販売店への卸売り、ガラス工事・建具・エクステリア・住設工事(建設会社様、工務店様、一般のお客様)
Webサイト https://www.okubo-glass.co.jp/

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photo & video: Kaho Fuse, Suzuka Sato(strobelight)
text: Minoru Nasu(real local Yamagata

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